エムスリー:躍進する業界特化型ポータル事業
要旨
本ケースは、ソネット・エムスリー社が運営する医療従事者向け情報ポータルである「m3.com」についてまとめたものである。「m3.com」は、全国約26万人の医師のうち、17.4万人の医師が会員となっている業界最大手のポータルサイトである(2009年3月時点)。同社は医療業界の Yahoo!Japanを標榜し、インターネット勃興期である2000年にソネット・エンターテイメント資本の下に設立され、ソネットが元々運営していた医療従事者向けポータルサイトの会員基盤の吸収や競合他社買収による会員基盤の獲得により、業界内で最も大きな会員基盤獲得に成功した。医療従事者向けのニュースや検索機能、ディレクトリを備え、PV数を着実に伸ばしてきた。医師の利用は全て無償であり、自社製品のアテンション獲得を目指す製薬会社からの年間基本料金が収益の柱となっている。「m3.com」の製薬会社向けの主要サービスは「MR君」と呼ばれ、製薬会社の本社MR(医薬情報担当者)による医師への情報提供をサポートする、メディア型情報仲介プラットフォームである。製薬会社は、会員毎にカスタマイズされた「m3.com」のトップページに、自社のMRの顔写真入りメッセージを表示させ、新しい医薬情報などを週に1度程度の頻度で配信する。医師は配信された情報を「開封」することで、書籍(amazon.com)等と交換可能なm3ポイントを獲得することができるといった、コミュニケーションが促進される仕掛けが備わっている。
掲載
2010年1月1日掲載