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デジタル化の二周目問題

~問題の構造と<検索・予約>ビジネスでの深堀り~ 根来 龍之(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 / IT戦略研究所所長)
早川 愛(早稲田大学大学院経営管理研究科)

インターネットの商用化から始まった「ビジネスモデルのデジタル化」がもたらす変化に終わりはなく、ソフトウェア化の進展、スマホの進化、IoT・AIの活用等によって2回目以降の変化の段階に入っている。この2周目以後のビジネスモデル変化への対応問題を「デジタル化の二周目問題」と呼ぶ。二周目以後のデジタル化には、業界内の「デジタルビジネスモデルの再変化」と業界をこえた代替が進む「汎用品化」がある。
本稿の目的は、以下の二つである。まず一つ目は、「デジタル化の二周目問題」の構造を示し、その一般性を論じることである。二つ目は、、事例としてグルメサイトと美容院予約サイトが抱えている問題と脅威を比較することで、デジタル化による汎用品からの挑戦を受けている産業の問題構造と、その問題に対応するための実践的示唆を得ることである。事例研究の対象とするグルメサイトと美容院予約サイトでは、デジタル化による「汎用品化」のビジネスモデルとして「Googleで予約」からの挑戦を受けている。
ここで、「予約サイト」の特徴として、Googleで店舗を検索しても、グルメサイトでの予約や店舗へ直接予約をする可能性があり、検索と予約は別々の行動となる。本稿では、検索と予約の行動は分離しているという着眼から業界特化検索・予約サイトにおける「デジタル化の二周目問題(汎用品化)」を考える。
事例分析には、消費者による検索・予約サイトの利用動向分析のために独自のアンケート調査を実施し、一部の消費者には追加のインタビューを行った。また、企業のIR情報や雑誌記事などの公開情報や、一般に公開されている企業のアンケート調査結果の引用により内容を補っている。
その結果、レストラン業界のように、「検索」と「予約」で利用するサイトの分離が進んでいる業界では、検索部分がGoogleに代替され、Googleで検索を利用する人の中から「Googleで検索→Googleで予約」という一気通貫型でGoogleを利用し始める人が出てくることが分かった。逆に分離が進んでいない美容院予約サイトでは、検索も予約も「業界特化型検索・予約サイト」を利用している人が最も多かった。この脅威の程度と切迫度を判断する基準は、「①検索において、Googleキーワード検索やGoogle Map検索が増加していく傾向がどの程度大きいか」「②検索したサイトでそのまま予約する傾向がどの程度あるか」によって決まる。
本研究では、独自実施のアンケート調査はサンプル対象に制約があった(WBS学生・卒業生)が、今後の調査のためには、より大規模な消費者を対象にしたランダムサンプリングによるアンケート、他業界にも対象を広げた研究、少し時間をおいて時系列での変化の観察が必要である。

キーワード

デジタル化、二周目問題、汎用品化

掲載

2023年3月掲載

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