Home Working Paper アパレル企業の顧客接点のデジタル戦略とプラットフォーム(PF)活用の実態と理由
Working Paper Working Paper

アパレル企業の顧客接点のデジタル戦略とプラットフォーム(PF)活用の実態と理由

~EC・OMO 戦略において自社アプリとPF はどのように活用されているか?~ 荒木 麻里(早稲田大学大学院経営管理研究科)
根来 龍之(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 / IT戦略研究所所長)

近年、アパレル企業では店舗販売以外のEC(電子商取引)が積極的に行われている。経済産業省の調査によると、アパレルの市場規模は2020 年で約2 兆円、その内EC 化率は約20%となっている。この比率は、全産業の平均EC 化率の8.08%を大幅に上回っている。また、ニールセンの調査(2019)によると、スマートフォン(スマホ)でのEC 利用がPC よりも多くなっている。本研究では、EC において代表的な産業であるアパレルを対象に、スマホを使った顧客接点のデジタル戦略について論じる。具体的には、顧客接点確保のための自社アプリとプラットフォーム(PF)の活用について分析する。本研究がとりあげるPF は、アパレル企業の利用率が高いZOZOTOWN、ZOZOMO、LINE 公式アカウント、LINE ミニアプリ、Shopify 等である。
本研究ではまず、LINE 公式アカウントのファッションランキング上位30 社のアパレル企業を抽出し、「プロモーション」「クーポン」「商品ディスプレイ」「決済」「ポイント」「ピックアップ」「問い合わせ」「カスタマーレビュー」「レコメンデーション」項目におけるアパレル業界のCRM の各プロセス(プロモーション、クーポン・・・・レコメンデーション等)における自社アプリとPF の活用実態を調査した。この調査に基づき、活用度が高い企業8 社を代表企業として抽出した。
次に、この8 社について、5 社はインタビューにて、3 社は公開データとセミナーで得た情報を用いて、CRM の各機能における自社アプリとPF 活用の顧客接点のデジタル戦略について調査を行った。これにより、アパレル企業は主に自社アプリとLINE 公式アカウントのみを活用するケース(ユニクロ)と、自社アプリ以外にPF を積極的に活用する選択をしている企業があることが明らかになった。
本研究により、ユニクロ以外の調査対象企業は、企業間で違いはあるが、集客を補完するためにはZOZOTOWN、LINE 公式アカウントを利用。EC から店舗への誘導効果としてはZOZOMO、アプリのダウンロード障壁を下げるためにLINE ミニアプリ、先進機能活用・費用削減・開発期間短縮のためにShopifyを利用していることが明らかになった。
最後に、各PF の一般的性質から上記利用の理由について分析した。ZOZOTOWN は、媒介型PF として大きなサイド間ネットワーク効果があり集客機能を持つ。ZOZOMO は、基盤型PF として事業者の個別接点を許容しながら集客機能を実現する。LINE 公式アカウントは、媒介基盤型PF として事業者の個別接点を許容しながら、その既存顧客基盤を活用した大きなサイド間ネットワーク効果を持つ。LINE ミニアプリ(基盤外注型PF)も個別接点を許容し、かつ多様な機能を実装できる性質がある。Shopify は、外注型PF として、開発期間を短縮、先進機能も利用でき規模の効果・機能開発の専門性を持つといえる。

キーワード

デジタル顧客接点、スマホアプリ、プラットフォーム、ファッション産業、EC/OMO 戦略

掲載

2022年3月掲載

PDFファイル

PDF(6.7 MB)

Working Paper 一覧へ戻る

Page Top